日本酒の元、酒母造りは生酛造り、速醸の2種類。山廃仕込みも要チェック!

日本酒の種類

日本酒の製造といえば米や米麹、水、もろみなどの名前がよく登場しますが「酒母」という言葉を聞いたことがありますか?
実は、日本酒には「1麹、2酒母、3造り」という言葉があります。
なんだか「1富士、2鷹、3なすび」を思い出しますが、初夢のおめでたいものランキングとは違い、日本酒の麹、酒母、造りというのは、どれを欠いても美味しい日本酒にならない、重要な3要素を挙げたものだそうです。

つまり「酒母」というのはそれだけ日本酒造りには欠かせないものということ。
「でも、ほとんど聞いたことないけど??」
と思っている方のために、今回は酒母についてご説明します。

聞いたことがある呼び方や、日本酒の種類、味などにも大きく影響してくるので、日本酒好きなら覚えておいて損はありませんよ!

酒母は良質な酵母を培養するためのお家

酒母に似た言葉に「酵母」があります。
どちらも日本酒には欠かせないものですが、酵母というのはアルコールを生み出す「菌」のことで清酒酵母とも呼ばれています。
一方、酒母はその名の通り日本酒を生み出すもととなるもののこと。

蒸した米、麹、水を用い、質の高い清酒酵母を培養する、いわゆる酵母の家みたいなものです。
酵母は酒母の中で良質な糖分を取り込み、分裂の過程でアルコールを作り出します。
つまり、酒母の出来栄えこそが酵母の生活を支え、ひいては日本酒の品質を左右するものになるのです。

酒母

では、酒母は具体的にどうやって造られるのでしょうか。
酒蔵によってやり方に微妙な違いはありますが、基本的な考え方や使用するものはほとんど変わりません。

  1. 「もと桶」という桶、もしくはタンクに麹と水を加えて混ぜ合わせる
  2. その中に酒造りに使用する少量の酵母と醸造用乳酸を投入する
  3. さらにその中に蒸した米を投入する

準備はこれだけでOKです。
ここから酵母が酒母を住みかとして分裂を繰り返し、良質な日本酒を作るまで待ちます。
何もせず、ただじっくりと熟成されていくのを待つのも日本酒にとっては重要なことなのです。

なんで乳酸菌を一緒に入れるの?

ところで、酵母と一緒になんで乳酸菌を入れるのか?
と疑問に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。

乳酸菌は比較的強い菌と言われています。
嘘か本当かは分かりませんが、生きたまま腸まで届くらしいので、そりゃぁたいしたもののはず。
そして、乳酸菌は酒母の中で空気中から侵入しようとする雑菌を防いでくれたり、野生の酵母を排除し、日本酒に必要な清酒酵母はしっかりと残してくれるという、なんとも酒造りに都合の良い役割を果たしてくれるようです。

小説で登場したら「ご都合主義」「そんな取って付けがあるはずない」とツイッターを炎上させそうなレベルの都合の良さです。
とは言え、酒造りの工程において桶やタンクの蓋は基本的に開放状態で外気に晒されているため、外部から菌が侵入しやすい環境下にあります。
それなのに、雑菌や野生の酵母を駆逐し、清酒酵母がしっかりと発酵できる環境を保持し続けられるのは、ひとえに乳酸菌の助けがあるからと言えるでしょう。

酒母の種類は「生酛」と「速醸」の2種類

ところで、酒母造りには桶やタンクに酵母と乳酸菌を投入すると書きましたが、厳密に言うと2種類の工程があります。
清酒酵母の育成を陰で支えてくれる、他ならぬ「乳酸菌」をどうやって投入するかということ。

例えば、酒母は国で、酵母は国民だとしましょう。
雑菌や野生酵母は外敵なので、国を守るためには兵隊が必要となりますよね?
その兵隊を「課金して手っ取り早く揃える」か、「無課金でじっくりと育てる」という二択になります。

自生している乳酸菌を使って酵母を守る「生酛造り」

もともと蔵の中に自生している乳酸菌を育てて酒母とする「生酛造り」は、じっくりと育てる無課金タイプ。
育成に時間をかけるため、複雑でしっかりとした味わいの日本酒になると言われています。
その分、手間と時間がかかるとあって、今では採用している酒蔵も減ってきていますが、手作りにこだわっている酒造メーカーは、今でも生酛造りを受け継いでいます。

清酒酵母と一緒に乳酸菌も加える「速醸」

酒母造りの段階で酵母と一緒に乳酸菌まで投入する「速醸」は、手っ取り早く強くなる課金タイプ。
生酛造りが酒母の完成に1ヶ月を必要とするのに対し、速醸はおよそ2週間と短いのが特徴です。
時間的なメリットに加え、生酛造りには専用の工程がいくつもあります。
これを省いて酒母を完成させられるというメリットは酒蔵にとって大きな魅力となり、今ではほとんどの酒造メーカーが速醸を採用しています。

山廃仕込みは生酛とちょっと違う?

「仕込み」なら、生酛と速醸だけでなく、山廃仕込みも仲間なのでは?と思った方も少なくないはず。
実は、山廃仕込みは系統的には生酛と同じ自生している乳酸菌を使っている昔ながらの酒母造りなんです。
では、何が違うのかというと、ちょっとだけ課金・・・ではなく、生酛にはある工程を省き、少し簡略化しているんです。

生酛造りの工程を知ろう

生酛造りは、酒母の元となる蒸し米や麹を半切り桶と呼ばれるたらいのような容器の中に入れ、米や麹をすりつぶし、どろどろにしていく山卸しという工程があります。
具体的な作業は、半切り桶の数が6〜8枚に分け、全ての半切り桶に入った米と麹を約3時間おきに2〜3人で混ぜながらすりつぶしていきます。
これを15〜20時間続け、しっかりドロドロにしていくわけですが、夜を徹しての作業になることや、冬場の作業で寒さが厳しいことなど、あらゆる意味で重労働なのです。

その上、時代の変化とともに「山卸しをしなくても酵素が米を溶かす」ことがわかったものだからそりゃぁ当然・・・
「山卸しなんか廃止だ!」となるわけです。
で、山(卸しを)廃(止した)仕込みをしているから山廃仕込みとなったわけです。

別に誰かが山に入って修行のように何かを仕込んだわけではないのでご安心ください。

それぞれの仕込みで味も異なる

日本酒の味は当然酒母の作り方によって異なります。
科学的な根拠はないようですが、生酛造りと山廃仕込みでも、微妙な味の違いは出てくると言われています。
昔ながらの生酛造りをした方が速醸よりもおいしい日本酒ができるとも名言できないところが難しいのですが、生酛造りの方が日本酒好きにとっては好みの味に仕上がることが多いよう。

市場に出回っている日本酒のうち、ほとんどが速醸であることは間違いありませんが、生酛や山廃仕込みの日本酒も手に入れようと思えばさほど苦労せずに手に入るので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。

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